元品の無明を切る大利剣(十二因縁)


元品の無明を切る大利剣(十二因縁)

12因縁表紙

お坊さんが「元品(がんぽん)の無明(むみょう)を切る大利剣(だいりけん)」
という言葉をお唱えしているのを耳にしたことはありませんか?
日蓮宗では、お葬式や加持祈祷でよくお唱えします。

今回は、この言葉をご説明させて頂きます。

仏教の根本思想に苦しみや悩みが成り立つ因果関係を明らかにした「十二因縁」というものがあります。
「十二因縁」には、
「無明→行→識→名色→六処→触→受→愛→取→有→生→老死→(無明に繋がる)」の12の要素があります。
「元品の無明」とは、苦しみや悩みが成立する因果関係の一番始めであり、
全ての根元である「無明」を指し、「暗闇、無意識」という意味を持っています。
それでは、「無明」をどんどん掘り下げていきましょう。

2世紀頃の高僧として知られる龍樹菩薩が書かれた「大智度論」によると、
無明には、仏道修行を邪魔する魔王、第六天魔王がいると書かれています。
第六天魔王というと、比叡山を焼き討ちした織田信長公の異名としても有名です。
なんと、無明では、第六天魔王が十軍(煩悩の魔軍)を引き連れ、あなたの精神に戦を仕掛けてくるのです。

十軍とは、①欲②憂愁(気分が晴れず沈むこと)③飢渇(飢えとかわき)
④渇愛(欲望への執着)⑤睡眠⑥怖畏(おそれ)⑦疑悔(疑いを起こすこと)
⑧瞋恚(怒り)⑨利養虚称(名利にとらわれること)⑩自高蔑人(驕り高ぶり、他を見下す)
のことを言います。つまり、全ての人が心の内側に持っている「魔」のことをいうのです。
どれも強敵な魔ばかりです。

しかし、心配はありません。タイトルでも触れましたが、
その強敵である第六天魔王をはじめとする十軍が居る無明を切ることが出来る大利剣こそが
「南無妙法蓮華経」のお題目なのです。お題目を受持することによって「元品の無明」を割り、
「元品の大燈明(菩薩性)」へと転ずることが出来るのです。
すると、苦しみや悩みを生むカルマから慈愛に満ちあふれたカルマへと一瞬にして変化していきます。

最大の敵は常に自分の内側にあります。
しかし、あなたの内側には必ずお釈迦さまが居られます。常にあなたの味方です。
どうか、皆さまが、お寺やお仏壇の前だけではなく、
何かを始める前や、もっと日常的にお題目をお唱えして頂くことをお勧め致します。