2021年5月02日
徳と得を説く
子供がまだ小学生の低学年の頃、こんな話がありました。
「お父さん、今からコンビニでアイスクリーム買ってくるけど、いらんか?」
「ほーほんならお父さんの分も買って来て」
「何がええ?」
「お父さんはハーゲンダッツの抹茶」
「お金」
私は自分の分と子供の分を渡しました。息子はそれを右手に持って、
左手を出してなんと「お小遣い」と要求してきました。
私はこの話は元々お前が言い出したもので、お小遣いが発生するものではない、ときつく言いました。
すると「そんなん損や」と言い張るので、いつになく頭に来て、
「お前はコンビニへ行って、冷凍庫を開けて、一つ取ったら得をして二つ取ったら損をするのか」
と大声を上げてしまいました。
子供は泣きそうな顔をして「そんなん損や」と言い張ったのです。
どうやら本気でそう思っている様子でした。みなさんはどう思われますか?
私はお寺の坊主をしていてそんな教育しかしていなかったのです。
昔は「徳を積む」ということをうるさく言いました。損得の「得」ではなく、「徳」です。
徳を積むというのは、他人の為に善い行いをするということです。
今は全てを損得の得ではかり、損をするのはいけないこと、得をするのはいいことである、
という価値観がまかり通っています。国会中継でも、嘘を承知で答弁しています。
その裏には、損得の価値観があるのです。
徳を積むということは、人間としてのグレードを上げるということです。
たとえ損をしているように見えても、徳を積むということに重きを置いたのです。
なぜならその為の人生だからです。そのことを子供に教えるのが教育であり、躾なのです。
今日本人はとんでもないところに舵を切ろうとしています。
戻れるうちに戻らなくてはいけません。
「損して徳とれ」の人生を。